出勤

雪が積もっている

 

普通に歩けば20分程の通勤路も雪が降ると40分かかる。雪国なのに歩道の除雪がなってないせいで雪をかき分け進むことになる。雪が降ったら歩くという選択肢がないのが普通なのだ。移動手段は車一択。

 

ここに来て約1年。何度か車の購入を検討した。利便性を考えると車はあったほうが絶対に良い。中古であれば買える金もある。ただ、どうしても踏ん切りがつかない理由がある。それは車を買ってしまったら、「私はずっと地方勤務でもかまいませんよ」という意思表示をしているのと同じ気がするからだ。もう一つ理由がある。車を買わずにいたら、早くここを抜け出せるかもしれないという願掛けだ。

 

やっとこさ会社に着く。本日最初の仕事は雪かき。通勤鞄を通用口に放り投げ、倉庫からスコップを取り出す。雪かきは苦ではない。肥える一方の身体だから良いダイエットだ。しんしんと振り続ける雪の中、車庫の中の営業車が出せる程度、ほどほどに雪かきをしておしまい。ダウンに少し積もった雪を払い落とし、通勤鞄を拾って会社の中に入る。

 

おはようございますと事務所の中に入ると、「おまえ昨日女子トイレの電気消してなかったぞ、ちゃんと消せ」と怒られる。20人ほどの営業所には私しか女子トイレを使う者はいない。すみません、気をつけますとヘラリと笑いながらPCの電源をつけた。

 

午前9時、いつもの通り始業時間を告げるチャイムが鳴った。ちゃんと出勤できてよかったという気持ちと、今日も出勤してしまったという気持ちを抱えて1日が始まる。